NIPPON BAUHAUS SOCIETY
ハウス・アム・ホルンの先進性
by 日本バウハウス協会

世界で初めての大衆のための家づくりは新たな提案にあふれている。

グロピウスは学生たちに街に出て何が流行しているか、求められるモノは何か、注目されているモノは何かを自分の目で見て探すように言った。学生たちは街に出て「今を正しく知ること」を学んだ。

世界で初めての陸屋根を採用し、天井を立ち上げ、東南180°の採光窓をつくり、天井から一日中部屋の中に太陽光が差し込む家にした。壁には貝殻の粉末を混ぜた塗料を塗り、光が当たるとキラキラ輝く壁にすることで生活の中で太陽の光を楽しむ配慮をした。

ハウス・アム・ホルンのゾーニングは、家の中心に6m×6m高さ4.5mのリビングを配置し、家族が帰ってきた時に必ずリビングを通って自分の部屋に行くようになっており、家族が自然に触れ合うことができるように配慮されている。

玄関からリビングに入って左奥にキッチン&ダイニングがある。そのキッチンは世界で初めてのシステムキッチンで、主婦の家事効率を高める提案が見られる。

子供は自分の部屋に入るためには必ずキッチン&ダイニングを通るように設計されている。

子供部屋はアルマ・ブッシャーが担当し、壁には落書きが出来たり、大きな箱を積み木に使用して遊べるようにしたり、照明もライトを受ける床に影絵が映し出されたり、多くの工夫がある。このように子供部屋一つにも多彩な提案がされている。

また、子供部屋から庭に出るドアがあり、子供は庭で自由に遊べるようになっている。この子供部屋から庭に出られる提案は現代のヴァイマールのアムホルン住宅群の家にも採用されている。

子供部屋はキッチン&ダイニングとつながり、その先でママの部屋とつながり、いつでもママとつながっている。主婦と主人の部屋はお風呂を挟んでそれぞれ独立している。主人の部屋にはリビングとつながったオープンの書斎があり、その机の先にある窓は瞑想の窓と呼ばれている。

主婦の部屋の家具も女性のためのデザインになっている。

グロピウスはハウス・アム・ホルンについて「芸術と手工業技術の新たな統一」と講演を行っている。当時の著名な批評家たちは「重要で意義深い」と評価した。

城井廣邦(日本バウハウス協会専務理事)