78棟の家は全て一棟一棟オーダーメイドでデザインされている。それにも関わらず統一感があり美しい住宅地になっている。
直線を活かしたフォルム、スクエア窓が美しさを際立てている。建物の色は住む人の個性を尊重して多彩な色が使われている。ブラック、イエロー、オレンジ、レンガ色などの住宅が並び、とても爽やかな感じがする。
驚いたのは土地の購入もルールがあって、広い土地の隣には狭い土地が並び、庭は狭い土地の人が隣の土地を自分の土地のように使えるという画期的なものである。
バウハウスデザインを見ることが出来たが、大切なのはどんな暮らし方をするかといったライフコンセプトを重視している点であった。
シンプルな建物は街の美しい景観を生んでいる。
ルドルフ氏の好意でご自宅を訪問し、どの様に考えこの家をデザインしたのかを聞くことが出来た。
住宅地共有道路から庭の様な通路を通って外階段を4段昇ると玄関があった。外観はレンガ色の塗装で目を引く。外階段の手摺りはルドルフ氏のオリジナルデザインで、3階から屋上に上がる外階段と屋上の手摺りは全て共通のデザインだった。玄関を入ると接客の間があり、ちょっとしたお客様はここで応対する。接客間から次の間に入ると部屋全体がキッチン&ダイニングだった。玄関の近くにキッチンがある設計はニュー住宅群では共通のコンセプトである。キッチン&ダイニングは全て自分の手で製作したオリジナルデザインで素晴らしく、現代的にまとめられている。
キッチン&ダイニングから続くバルコニーにはウッドデッキがあって、普段はそこでリラックスする時を楽しんでいる。バルコニーの真ん中に一本の木が植えてあり、それはシンボルツリーの様だった。
キッチン&ダイニングから半階降りるとルドルフ氏の書斎があり、書斎から庭に出られる様になっていた。キッチン&ダイニングから2階に上がるとそこは全てリビングになっている。大きなソファーとオーディオ装置、手作りのCDラック、照明は天井には無くフロアスタンド照明だった。人がいるところの照明をつける、合理的な発想である。
リビングに隣接する主寝室は天井近くに高さ30cm横5mの光り取り窓があった。
リビングから外階段を使って屋上に昇ると住宅群が一望できる。季節の良いときは屋上で寝るそうだ。
ルドルフ氏に「バウハウスとは何ですか」と聞いたところ、「バウハウスは【理念】」と一言。「デザインを見ないで欲しい、デザインの背景にある【理念】を見て感じて欲しい、バウハウスが現代に注目されるのは時代を超えた【理念】があるから」と言われた。
城井廣邦(日本バウハウス協会専務理事)