NIPPON BAUHAUS SOCIETY
無駄を極限まで省く。バウハウスのシンプルイズベストの原点は日本の茶室にある。
by 日本バウハウス協会
待庵(イラスト H.Shiroi)

茶室の「無駄を極限まで省く」ことが、シンプルイズベストの発想の原点にあるということを知った。グロピウスは日本に来た際、デザインの象徴的なものを450年前の数寄屋造、茶室からヒントを得た。シンプルにすること、無駄を省くことで現代の工業生産が可能になった。シンプルにすることが工業生産を生むことにつながったのは、グロピウス、コルビジュエ、ミース・ファン・デル・ローエらの応用する頭脳が優れていたためだと思える。
凡人が茶室を見てヒントとするには、相当多くの情報を脳内に蓄積させ脳内情報と外的情報を頭の中で結び付けて新たな発想を生むという努力が必要である。
私たちも常に好奇心を持って多種多様な情報を頭の中にストックしておくことが大切である。バウハウスの形態教育の教授も授業で「目から入った情報は脳内にある情報と結びついて新たな形態を生み出す」と言っている。
バウハウスは全体像から見ることの大切さを求めている。多視点でモノゴトを捉えることが脳内の反応を高めイメージを生み出すことにつながると言っている。
グロピウスの頭の中には数寄屋造を近代デザインに結び付けるヒントとなる内的情報があふれていたと言われている。
養老孟子氏も「和室礼讃」の中で脳内情報について注目するコメントを書いている。

西洋の近代建築家は、家と庭との間の室内開口部、テラス、バルコニーなど、庭の景色や遠近感を考慮し配置している。
グロピウスも日本に影響を受けた一人である。バウハウスの原点には日本の数寄屋造、茶室があるとはっきり言っていた。
私がデッサウ、ヴァイマールに行った際に、ドイツの研究者から「バウハウスを研究するためには日本の数寄屋造、茶室を学んできなさい」と言われた。

参考文献)
和室礼讃―「ふるまい」の空間学,晶文社,2022,日本建築和室の世界遺産的価値研究会 著
利休の茶室,鹿島出版会,1968,堀口 捨己 著

城井廣邦(日本バウハウス協会専務理事)